[2001.06.23]
  論点なき訴え


 ▼米の2州政府、新OSでマイクロソフト提訴を検討(CNN.co.jp)
  http://www.cnn.co.jp/2001/BUSINESS/06/21/microsoft.antitrust.ap/index.html


 「『独占』は悪だが,その結果が悪であるかどうかはわからない」。「人間はいつも,最終的に『自分』という独占物のために動いている生き物でしかない。だから,独占は起きる」(ある経済学者の手記)。

 米国の2つの州の司法当局が,マイクロソフト社のウインドウズXPについて,独禁法違反の疑いがあるとして,提訴を検討している。マイクロソフト社の競争相手各社が作るグループ「プロコンプ」の訴えを受けたもの。

 だが,これは暗に昨年6月の連邦地裁でのMS2分割裁定(過去記事)が,まもなくくだされる連邦控訴裁で覆されることの証明,という意見もある(ZDNet Newsの記事)。結局死なない巨人には,新たな攻撃を加えるべき,との判断から行われたアピールが今回の記事だ。どうにもその独占状態に手を出せない司法側のあたふたさばかりが強調されている。

 ブラウザを密接化させて独占し,インスタントメッセージを同様に独占し,メディアプレイヤーも独占し,ネットワークを使った情報管理をヘイルストームで独占し,…とOSの拡張は進む。ネットワークとOSとの統合は当然避けられるものではなく,マックOS Xでのサーバー系機能やメーラーの完備とも繋がる話だ。MSは,ただそのやり方が非常にへたくそなだけで,方針として間違っているものではない。そしてオフィス系スイートも当然ネットワーク上での利用へと移行していき,司法側の追撃は,論点を失う。MSは狡猾なわけではなく,実直にOSを流れに乗せているだけ。となると,結局,裁定を下すのは,その流れを無意識に欲してXPを買って使い,判断する利用者たちだけだ。


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